摩天楼に駆けて
――時間だ。
摩天楼の頂点に差し掛かった満月の光と競い合うように煌めく無数のホロ広告。
そのビルの陰に蹲っていた男の身体に光のラインが浮かび上がる。
心臓のあたりから蒼白く光る緑のラインが背中、腕、脚へと伸びていき、機械的な模様を浮かび上がらせる。
次の瞬間、男は地を蹴った。
闇の中を、蒼白く光る緑のラインが軌跡を描き、まるで男を射出するかのように摩天楼の空へと誘う。
空へと駆け上った男のバイザに光が宿る。
それは全てを見通す人工衛星のセンサのように摩天楼を抱く夜の街を鋭く見据える。
――見つけた。
蒼白く輝く大きな月を背景に、男が呟く。
そして、急降下。
その手には光の刃を持つ
ブレードとそれを握る
闇を切り裂き、男――ニンジャは一刀のもとに悪を斬り捨てた。
ニンジャを排除しようと
眠らない街の無数のホロ広告が、ニンジャを包み込みその存在を掻き消す。
何もなかったかのように。いつもの喧騒が全てを包み込んでいた。