ふわり、夢の案内人
「
そう言ってマイクをミュートにする。
エンドカードを表示、ゆるふわ系のジングルで配信を締める。
「うーん、今日のみんなの反応も可愛かったー!」
PCの前で大きく伸びをし、立ち上がって部屋を見回す。
大小様々な
駆け出しのバーチャルライバー、「
今日の配信はここまで、ゆるふわ系ライバーとして、深夜の配信は一切しない。
少なくとも、リスナーのみんなにはゆるゆるふわふわな
明日の配信に向けての準備を終わらせ、布団に入る。
部屋の電気を消して。
天井に映し出されたホームプラネタリウムの星座を見ながら、夢の世界へ。
綿菓子でできた雲のような地面、無数のキャンディが実を付けたお菓子の木。
あの羊はまるでポップコーン。
ゆるゆる、ふわふわした感覚で
腕にはお気に入りのテディベア、衣装もつい先日お披露目したばかりの新衣装。
ふわふわレースが揺れてリボンが風になびき
ほら、ビスケットのウサギがあちこちで跳ね回っている。
川にはグミキャンディの魚が泳ぎ、時々水面に跳ねてはサイダーの飛沫を掛けてくる。
現実なんてどうでもいい。
わたしはただ、この夢の世界で――。
聞き慣れたジングルが何回も響いている。
曲も作れるとあるライバーさんがわたしのために作ってくれた配信終了のジングル。
重い目を開けて、わたしはスマートフォンに手を伸ばし、アラームを止める。
ジングルがすっ、と止まり、わたしは
テディベアが並ぶ部屋、わたしの大好きなゆるゆるふわふわでいっぱいなお城。
わたしはこのお城のお姫様。
いつか迎えに来てくれる王子様を待つお姫様――。
いや、そんなことはありえない。
わたしはこのお城から一歩も出なくなって、夢見 ふわりとして
大好きな
わたしはそんな自分が好き。
現実なんてどうでもいい。
ただ、みんなを甘くふわふわな世界に誘えれば、それでいいから。
PCに向かい配信ボタンをクリック。
甘いトークから始まるゆるふわな世界。
きょうのみんなもわたしの話に夢中になって。
ゆるゆるふわふわな世界に迷い込む悪いオオカミさんは追い出して。
配信の締めはいつもの流れ。
聞き慣れたジングル響かせて。
パタンと閉じる現実の扉。
おやすみなさい、いい夢を。